番組検証結果 
NHKスペシャル(NHK)
(2002年5月放送分)

番組名 番組タイトル 放送日 総合得点
NHKスペシャル 「変革の世紀 第2回 情報革命が組織を変える
 〜崩れゆくピラミッド組織」
5月12日 73点/125点 58.4

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・番組名 NHKスペシャル(NHK、土日、21:00-21:50)
・番組タイトル 「変革の世紀 第2回 情報革命が組織を変える 〜崩れゆくピラミッド組織」
2002年5月12日放送
・内容
(番組HPより)
最前線の兵士に権限を与える組織改革に踏み切った米陸軍。"逆ピラミッド型"への転換を目指すフォード社。未来にはどのような組織が出現し、一人一人はどんな役割を担うのか。高度情報革命が加速する巨大組織変革の現場をルポし、未来型組織の萌芽を探る。
・総合得点 73点/125点
・構成 18点/25点
・論理性 13点/25点
・新奇性 13点/25点
・広範性 10点/25点
・表現 19点/25点
 
草野厚
・構成 変革の世紀のシリーズの一つ、これまでの組織の指示命令系統が、中央集権であるために、危機時に十分に対応できないと考える企業や人々が増えてきた。その理由を、歴史的、個別組織への分析などをまじえながら説明した番組は、私の専門の領域に近いということもあり、メッセージは明確に伝わってきた。ただし、正ピラミッドを逆ピラミッドに変えるというこの改革への動きがどこまで普遍的なものかがよくわからなかったのが残念。 4点
・論理性 米国軍隊で中央集権による指示命令系統が見直されたのは、ソマリアでの作戦の失敗だとして、当時の状況を詳細に説明している。多数の犠牲者が出た地上の車両の状況は、空中の航空機は把握しており、悲劇を回避する情報は握っていた。しかし、命令系統は、司令部、戦闘ヘリという流れであり、そのルートで指示がなされたときには、既に悲劇ははじまっていたというのである。軍隊の構成員が命令系統を変えたり、臨機応変に行動することは許されない。この悲劇に学んだ米国陸軍は、兵士一人一人が、責任をもち行動するという方式に改めることになった。番組は、企業など広く採用されている中央集権方式が、プロイセンの軍隊に学んだことを明らかにしたが、企業においても、この方式が万能ではなく、特にインターネット時代には、かえって意思決定において障害になることをフォードの例で示している。具体的に例証している点で、説得力がある。 5点
・新奇性 組織の意思決定方式が、ここまで変化していると思わなかった。ただ、米国陸軍の部下に大幅に権限を与えることによって、あたかもコンピューターゲームを行うかのように、兵器を、兵士が発射させることができるという点は、背筋がぞっとした。セイフティネットは、どのようになっているのか、きちんと説明がほしかった。 3点
・広範性 おそらく、中央集権制による意思決定方式は、巨大な絶滅寸前の恐竜であり、変えなければならないという規範論に立てば、十分に説得力はある。しかし、小泉内閣の一年間は、分散化された意思決定方式を、トップダウンに変えようという試みでもあった。その意味では、この試みに批判的な人々のコメントがほしかった。 2点
・表現 CGが豊富に使われ、米国陸軍からの映像も会って、説得力があった。ただ、中央集権システムをやめ、分散ネットワーク型に変えるかがポイントであるにしては、前者のCGを使った図式が、大変意わかりやすかったのに対して、後者は、技術的にもかなり簡略化された方法で、わかりにくかった。 4点
 
小野塚征志
・構成 組織改革に取り組んでいる事例を複数紹介し、その組織改革の内容の検証を通じて、組織のあり方を考えていく構成はわかりやすかった。それぞれの組織が進めている改革について、内容を整理できていれば、よりわかりやすくなったと思われる。 4点
・論理性 様々な組織が中央集権型システムからの脱却を図っていることについては、論理的な説明がなされていた。しかし、中央集権型システムとは、トップが強い権力を握っていることを指すのか、ピラミッド型の指揮系統を有していることを指すのか、あるいはその両方なのか、はっきりしていなかった。そのため、中央集権型システムに代わる組織のあり方については、論理が飛躍した説明になってしまっていた。 2点
・新奇性 中央集権型システムの限界については、数年前より多くのメディアで報じられている。あまり新しさを感じることのできないテーマだったと思う。他方、番組が取り上げた事例の中には、他のメディアでほとんど報じられていないものもあった。 3点
・広範性 事例数は多かった。しかし、情報は一方的だった。なぜなら、中央集権型システムを否定し、ネットワーク型のシステムを評価する情報が圧倒的だったからである。末端に多くの権限を与えたネットワーク型のシステムには、情報漏洩の問題など、いくつか考えておくべきデメリットがあると思われるが、それに関する指摘はほとんどなかった。 2点
・表現 模式図は非常にわかりやすかった。外国人や外国企業の名称については、アルファベットでも表示して欲しく感じた。なぜなら、このようなテーマの場合、この番組が取り上げた外国人や外国企業を調べてみたいと思う視聴者がいるのではないかと思われたからである。その場合、和訳された名称で調べることは困難である。 3点
 
小峯弘靖
・構成 ピラミッド型の組織の変革を、前半では官僚組織である米国陸軍と民間組織であるフォードを例に取って説明している。後半では、未来の組織がどうなっていくのかを民間企業によるオルフェウス管弦楽団への関心とマサチューセッツ工科大学(MIT)のマローン教授の研究を通して示唆を行っていた。コンピュータグラフィクスやアニメーションがふんだんに使われ、音楽は坂本龍一が担当するという贅沢な作りになっている。「情報革命が組織を変える」というタイトルであったが、その内容については90年代後半に論議されていたことで、番組を通して特に新しい発見は見当たらなかった。 3点
・論理性 ピラミッド型組織を変革する理由は、「高度情報化」と「グローバル化」であるという。残念ながら、高度情報化とグローバル化の言葉の定義とそれらの説明が十分ではなかった。米国陸軍の組織変革でインタビューを受けたデュビック少将が「一兵卒までもがリーダーになる」と指摘し、現場への権限委譲が今以上に本格化するとのことであった。ならば現場の兵士の決定が誤りであった場合、それに対する処罰等はどうなるのかが知りたかった。オルフェウス管弦楽団が民間企業から浴びているという。指揮者を置かず、楽団員がそれぞれ意見を交わすことで、演奏を行っているとのことであったが、世界の管弦楽団の中でオルフェウスがどの程度の実力に位置しているのかがわからないと正当に評価はできないのではないか。 2点
・新奇性 フォードの工場での「生産検討ミーティング」が紹介されていた。映像を見るかぎりでは、かつて日本の製造業者が積極的に行っていた総合品質監理(TQM)運動を連想させた。現場への権限委譲がTQMとどう違うのか。米国陸軍の新しい試みの中で、「戦術インターネット」という言葉が出ていた。この言葉の説明が十分ではない。通常のインターネットと何が違うのか、それとも単に戦術という単語をつけたのか。 2点
・広範性 「高度情報化」と「グローバル化」が、組織変革の原因であるということであったが、それらの言葉の定義と説明が十分ではなかった。フォードが組織変革に至った背景には、年々下がるシェアの低下が原因なのではないか。生き残りのために、民間企業は組織変革を頻繁に行っている。フォードの例は、いわばネガティブな理由による組織変革であって、この番組で取り上げるべきものであったのか疑問符が残る。 2点
・表現 コンピュータグラフィクスやアニメーションがふんだんに使われ、音楽は坂本龍一が担当するという贅沢な作りになっている。番組を見ることで、製作者の意気込みを感じることができるが、逆に「優等生」的に仕上がっており面白みが少ない。 4点
 
土井系祐
・構成 情報革命の進展がもたらす、未来型組織はどのようなものになるのか。産業革命以来の大量生産・中央集権システムが崩れ、ネットワーク型の組織へと変わって行こうとしている様子を描いているが、冒頭から描かれる大企業フォード社の逆ピラミッド型への転換は、現在進行形のプロジェクトであり、整理の仕方には疑問を思った。 3点
・論理性 「一兵卒までが、リーダーとしての力を求められる」という話では、末端の兵士にまで同じ情報を共有させて、機動的に動くことを理想にしているが、軍隊のような殺人を手段とする組織で、責任を分散することは本当に可能なことなのか疑問を持った。 2点
・新奇性 指揮者のいないオルフェイス室内管弦楽団、インターネットを利用するバックマン・ラボラトリーズ社など興味深い事例が多かった。 4点
・広範性 モルガンスタンレーでは組織のフラット化を進めたが、会社への帰属意識をどうもたせるかという新たな課題が浮上したという。このような未来型組織の問題点と思われる情報は、非常に少なかった。 2点
・表現 CGを使って、軍隊の命令系統を示したり、21世紀型組織図を表現したりわかりやすく表現しようとしている。 4点
 
古川園智樹
・構成 情報革命の結果、中央集権システム型の組織は変革をせまられ、個人が自律的に参加する21世紀型の組織になっていくことを、米国陸軍の組織変革やフォード社の組織変革を事例に説明している。また21世紀型の組織として、ランドラボラトリー社の実際の成果も紹介している。情報革命以前は、上司の命令通りに動く中央集権システム、情報革命以後は、個人が自律的に参加する組織という、非常に単純な構成にしているので、かなりわかりやすい。
4点
・論理性 情報の共有は実は非常にコストがかかる行為である。従って、番組で21世紀型の組織として紹介していたような事例は実際にはかなり難しい。インターネットなどの技術を使用しても、どの程度まで情報が共有されるかは課題として残るのである。また、情報革命以前の組織を軍隊やフォード社で代表させている根拠がよくわからない。情報革命以後の組織もなぜそのようになるのか、特に経済学的な根拠に乏しい。これらは問題をあまりに単純に二分化したためであろう。論理性にかなり問題がある番組である。
2点
・新奇性 そもそも情報革命以前には、フォード社のような中央集権システム型の組織しかないような意見はかなり偏見である。もちろん欧米ではヒエラルキー型の組織は多かった。しかし、日本の製造業の組織などは単純なヒエラルキー型ではない。現場の意見を十分に汲み取り、ある程度情報共有もなされていた。フォード社の新たな試みはすでに日本企業が80年代に達成していたことである。こうした、かなり知られている日本企業の特質を全く紹介せず、単純に中央集権システムから組織が変革しているといのは、あまりにありふれた陳腐な内容である。
1点
・広範性 情報革命以前の組織を、軍隊とフォード社で代表させて中央集権システムでると結論づけるのは、あまりに広範性に欠ける。日本企業や欧米以外の組織形態に関する情報を提供する必要がある。情報革命以後の組織形態を探るためには、学者や楽団、会社など情報を広範に提供していた。従って、後半部分ではせっかく広範な情報を提供しているのに、結論を急ぎすぎて、「個人が自律的に参加する組織」としてしまうのである。番組全体として、前半部分に関してあまりに広範性にかけていたために、かなり問題があるものとなってしまった。

2点
・表現 組織形態をCGを使用して表現していたのは、非常にわかりやすかった。特に米国の陸軍が組織を変革させるとどのようになるのかを説明した部分は各所に工夫が見られて、非常に理解しやすかった。番組全体として、表現にかなり工夫が見られた。
4点
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