番組検証結果 
NHKスペシャル(NHK)
(2002年2月放送分)

番組名 番組タイトル 放送日 総合得点
NHKスペシャル 「がん治療・副作用はなくせるか
  〜アメリカ国立がん研究所の挑戦」
2月2日 89点/125点 71.2

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・番組名 NHKスペシャル(NHK、土日、21:00-21:50)
・番組タイトル 「がん治療・副作用はなくせるか 〜アメリカ国立がん研究所の挑戦」
2002年2月2日放送
・内容
(番組HPより)
世界最大のがん研究機関であるアメリカ国立がん研究所。そこで「いかにがん細胞だけを狙い撃ちにし、患者の負担を減らすか」をテーマに進められている外科手術や抗がん剤の開発などを取材し、新たな段階に入ったがん治療の最先端を見る。
・総合得点 89点/125点
・構成 18点/25点
・論理性 19点/25点
・新奇性 15点/25点
・広範性 16点/25点
・表現 21点/25点
 
草野厚
・構成 米国の副作用なしを目指すがん治療紹介。前半では新しい治療法、つまり副作用を減らし、がん細胞だけを除去する治療法を試みている患者の事例が示される。後半は、そうした副作用をなくす治療法がどうやって開発されたのか、副作用がどうして起こるのかなど、メカニズムを説明している。大変にがん患者にとっても勇気の出る情報を整理して紹介してくれた。ただ、日本ではこうした治療法をすぐに取り入れることが可能なのかどうかは、是非、伝えるべきだった。なぜなら、ガンは国境を越えた病気だからである。 4点
・論理性 新治療法がどのようなものか、前半では米国国立ガン研究所が開発した隔離還流治療(男性、眼球メラノーマが肝臓に転移)に焦点が当てられたが、術前、術後の患者や、親族の様子の変化は、活字ではわからない映像の勝利といってよいだろう。また、ランダム検査のために、患者が隔離還流治療を行ってもらいたいと考えても、通常の手術を受けざるを得ない場合もあり、それが具体的に示されたことは、新治療方法が認可されるまでの困難を伝えていた。後半は、抗がん剤で、なぜ副作用が起きるのかを、分子レベルで解明(例ゲルナダマイシン)していたが、単に治療方法を紹介しただけよりも、番組全体に奥行きが出た。 4点
・新奇性 この場合、米国以外の国でのがん治療の最前線はどうなっているのか、触れてよかったと思うが、番組の目的を超えているのでないものねだりということになろう。ただ、全米の医学界全体が、この治療法について賛成しているのか、問題を指摘する人々はまったくいなかったのかについては、触れておいたほうがよかった。 3点
・広範性 見るもの全てが、新しい情報なので(少なくとも素人の私には)甘いといわれるかもしれないが、取材チームの努力もかって5点にした。 5点
・表現 がん患者を登場させ、治療中の表情などを含め映しているのだから、リアルさという点では、申し分なかった。。ただ、最初の抗がん剤の副作用の人体のCGは、見方がわるかったのか、今ひとつわからなかった。後半の、3次元シュミレーションで、ガンを立体的にうつしだし、そこだけに放射線を当てる方法のCGはわかりやすかった。 4点
 
小野塚征志
・構成 全般的にわかりにくい構成だったと思う。この番組の最大の問題点は、一度も全体像を提示しなかったことにあるのではないか。この番組を見ても、米国の研究体制や医療システム、あるいはがんに対する治療法を俯瞰的に理解することはできないと思われる。一方、だからといって焦点が絞られていたわけでもなかった。がんに対する治療法といっても、化学療法と薬物療法では大きく異なる。しかし、いずれか一方に焦点を当てているわけではなかった。また、国立がん研究所以外で研究が進められている治療法も紹介していた。国立がん研究所に関係するがんの先端的治療法を順番に紹介しただけとさえいえるのではないか。 1点
・論理性 国立がん研究所の年間予算や人員、あるいは「隔離かん流治療」の実施数など、多くの数値情報が紹介されていた。特に治療法については、有効性や臨床試験の方法など、極めて説得力のある有益な説明があったと思う。ただし、論文やホームページを紹介するのであれば、論文名やホームページのアドレスも明示して欲しく思った。 4点
・新奇性 テレビ番組で米国の国立がん研究所を取り上げること自体、珍しいといえるのではないか。また、番組で紹介していた治療法も、日本ではあまり報道されていないのではないかと思う。とはいえ、紹介していた治療法が本当に最先端のものであるとは思えない。なぜなら、既に100以上の臨床試験を済ませ、結果が得られているものは、何年か前に開発された治療法だからである。まして、臨床試験が済んだ段階の治療法を「先端」と捉えることには無理があると思う。サイエンスなどの専門誌を読んでいるような視聴者からすれば、新しさをほとんど感じられない内容だったのではないか。 3点
・広範性 広範性はまったく確保されていなかった。米国内での国立がん研究所の位置付けが一切わからなかった。がんに対する治療法を俯瞰して理解することもできなかった。臨床試験の仕組みについても、断片的に紹介されていたが、プロセスの全容は最後まで紹介されなかった。先端医療を受診している患者についても同様である。受診できるまでに、どのようなプロセスがあったのか、インフォームド・コンセントの仕組みさえ紹介されなかった。他方、公平性にも問題があったと思う。国立がん研究所のあり方、研究が進められている治療法に批判的な人物は誰一人登場しなかった。この番組の英語バージョンを制作すれば、そのまま国立がん研究所の広報ビデオになるだろう。 1点
・表現 「隔離かん流治療」「分子標的薬剤」「眼球メラノーマ」などの専門用語を字幕で提示することにより、理解が容易になった。また、治療法を紹介する際に用いられたCGも有益だった。インタビュー対象者の氏名だけでなく、所属や肩書きも表示したことは評価できる。全般的に数値情報が多かったと思うが、数字は頭に残りにくいので、重要な数値情報については、字幕やグラフを使い、視聴覚の両面から伝えて欲しく感じた。 4点
 
小峯弘靖
・構成 がん治療の実験と開発がどのようにして行われているのか、アメリカの国立がんセンターを中心にして取材を行っている。「隔離かん流治療」「分子標的薬剤」「グループ療法」と3つの方法に焦点を当て、がん治療に伴う副作用をどのようにして抑えようとしているか説明をしている。「隔離かん流治療」と「分子標的薬剤」は国立がんセンターで行われていたものであったが、後者の「グループ療法」はスタンフォード大学で行われていたものであった。強いて言えば、国立がんセンターとスタンフォード大学がどう関連づけられるのか説明がほしいところである。 4点
・論理性 国立がんセンターでの治療は「ランダム化試験」というものがあり、新しい治療法と従来の治療法を患者や医師は選択できないことになっていた。このことは冒頭で説明すべきではなかったかと思う。「ランダム化試験」の説明の前までは、原則的に誰でも同センターで治療を受けられるのではないかという印象を与えてしまうことにはならないだろうか。 3点
・新奇性 事実を追っている番組であり、かつ時間とお金をかければ、プロであるならばこのような番組の制作は容易であろう。新奇性はほとんどない。 1点
・広範性 国立がんセンターで開発された治療法、薬剤が過去にどれくらいあったのかをコンパクトにまとめたもの(年表等)の提示があればありがたい。治療に薬の開発にあたった医師を1人1人インタビューしている点は、評価できる。 3点
・表現 患者の家族が薄着をしていたが、いつ頃取材したものであろうか。コンピュータ・グラフィクスによる隔離かん流治療の説明、染色体やイチマニブのイラストはわかりやすい。声の出演が「81プロデュース」とあった。NHKの職員ではなく、外部に吹き替えを頼んだのであろう。NHKの資金的な豊かさを感じさせる。 4点
 
土井系祐
・構成 ガン治療の方法と薬の開発を手がける米国立がん研究所の様子について、隔離かん流治療、分子標的薬剤、3次元シミュレーション、グループ療法と4つの事例を取上げている。どの事例についても、まだ確立された治療法ではないが、臨床実験されて、確実に進歩している様子がよくわかった。 5点
・論理性 個々の治療事例についても、それぞれに論理的で、素人でも理解できるものだった。臨床実験の積み重ねのために、すべての人が新しい治療法を受けられるわけではないことや、副作用が強いもの、失敗することなども、ふれられている。 4点
・新奇性 最新治療の数々は、いままで不可能だと思われていたような病人をも、再発せずに完治させる可能性をはらんでいる。 4点
・広範性 非常に立派な情報公開がなされているように見受けられた。日本の国立がん研究所も、一般的に知られていないだけで、同様の情報公開がなされているのだろうか?この番組の趣旨ではないが、日本の様子について興味が湧く。本当に、いい話ばかりなのか、少々疑問点も残った。 3点
・表現 CGをふんだんにつかって、目に見えない薬剤の構造について、わかりやすく説明している。実際の肝臓ガンの治療前、治療後の映像など、リアルなものが多かった。 4点
 
古川園智樹
・構成 がん治療における最大の難点は、抗がん剤が正常な細胞までを破壊してしまうという副作用である。この副作用を克服するために、アメリカ国立がん研究所が、医学の最先端としてどのような取り組みを行っているかを紹介している。番組としてのメッセージは無いが、情報紹介としては非常に分かりやすいものであった。 4点
・論理性 隔離かん流治療、分子標的薬剤、3次元シミュレーション、グループ療法という4つの先端事例を紹介することで、アメリカ国立がん研究所の取り組みの全体像を紹介するのに成功している。日本を含む他の研究期間との対比があればなお分かりやすかった。 4点
・新奇性 本番組で紹介された内容は、どれも初めて見るものであった。ただ、がん治療の最先端の紹介という番組の性格を考えると、情報が新しいというのは当然のことかもしれない。 4点
・広範性 多くの事例を取り上げ、それぞれの治療法について研究者である医師、及び患者へのインタビューを行っている点が高く評価できる。「論理性」の項目でも述べたが、他の研究所との比較、あるいは行政との関係も紹介されればなお良かった。 4点
・表現 隔離かん流治療や分子標的薬剤と言った、一般的な視聴者には理解し辛い専門的な問題を、CGを効果的に使うことで、非常に分かりやすく説明している。 5点
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